Vol.304 2020.6.9

音楽・美術の旅 メールニュース
 
Column

すでにイタリアが恋しくて その1

国境を閉ざされて3カ月が過ぎた。
ウイルス蔓延とそれを受けることで訪れた惨状はただひとつの国境を封鎖するにとどまらず世界の多くの国々に出入国の規制を課すこととなった。逃げるように欧州から日本へ渡ることができて、同じような感染はここにもありながら安心して眠れる生活を得ることができている。そう、日本という国は自分の暮らすイタリアと比べると多少偏りは否めないまでも自粛本能の優れた人々を育んでくれるいわば堅守の砦なのである。

堅守県といえばそれは虫のいい主張なのかもしれないが、身を寄せて久しい実家のある鹿児島はここまで10名の感染者数とまずまず強運に恵まれている。そう、自治体の取り組みを評価するではなくここはただ運がよかっただけに過ぎない。要するに無軌道なクラスターが混乱を招く中枢に入ってこなかっただけの話だから。

日本人の自制心と情報を分析、それを自ら咀嚼する力は世界でもトップクラスであろう。自己防衛本能といったほうがわかり易いかもしれない。ただ渡るか否かではなく石橋の叩き方まで考えあぐねる用心深さを持っている。イタリアで長く暮らす自分から見るとやや過度な抑制、あるいはメディアに踊らされているそのような感は否めなくもないがしかしよき結果に反映されているのでやはり肯定せざるを得ない。これからの課題は再び浮び上がってくるであろう感染への対策に加えて、経済をどのように立て直していくか、その上で世界へ向けた開国のタイミングがこの上なく重要になってくる。

イタリアより日本へ向かったエアチケット(アリタリア航空)の復路が6月末まで閉ざされたままであったが、7月上旬に復旧を予定しており、3か月ぶりの渡航が叶いそうだ。イタリアのメディアやミラノに暮らす友人から届く便りはいままだ芳しいものとは言えないが、それでも州の行き来すらままならなかった苦境から抜け出した喜びは伝わってくる。完全な自由を得たわけではないがイタリアに戻れるという何とも言えぬ思いがひしと込み上げてくるのである。

イタリアの夏はスペクタクルだ。青天に湧き上がる入道雲そのものであろう。6月がそのまま加速をもって一気に8月まで駆け上がる。楽語にアチェレランドという曲調の緩急を示すイタリア語があるが、“畳み込むように”という語意が季節の推移を表現するに相応しい。波に呑まれるかのように盛り上がりひと夏は終わっていく。
わたしにとってイタリアの夏はすでになくてはならないものになってしまっている。この魂まで焦げつかせるような季節をあと幾たびここで過ごせるだろう、と夏の終わりにはため息が止まない。

堂満尚樹(音楽ライター)

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